1. 小刻み歩行 70代男性
主訴:肩甲骨間部の痛み。痛くて起きてしまう。
70代男性
身 長:170㎝
体 重:49kg
血 圧:拍動がはっきりと聞き取れないため無記載。
既往歴:脳梗塞、心筋梗塞
その他:心臓ペースメーカー装着。
奥さん同伴。←奥さんがいないと行動できない為。
来院時、杖をついて,すくみ足、小刻み歩行の歩きをしていたので、脳に障害があると思い問診票を確認。2回脳梗塞を済ませていらっしゃいました。
問診・検査へ
※問診・検査は長いので問題があった事だけ記載。
・腱反射:上腕二頭筋反射、橈骨筋反射は減弱(反応が小)。ただし、力が入っていたため判断は難しい。病的反射(正常成人では見られない反射、乳児には見られる)
・手掌オトガイ反射:右-陽性 左-陰性
・触診:圧痛点ー肩甲骨間部上方が顕著。肩甲骨下。腰。
・過敏点ー足底
・脈診:右・左ー弦虚 左右の尺:弱
・舌診:淡紅(赤味がかっている)、膩苔(苔がべっとりと厚い)
・視診:腰が後湾している(前かがみ)
<<<用語解説>>>
すくみ足:初めの一歩が踏み出しにくい
小刻み歩行:歩幅が小刻みな歩き方
上肢の腱反射(3種類):
上腕二頭筋反射・橈骨筋反射・上腕三頭筋反射:その筋の腱を叩いて腕が挙がれば正常。挙がらなければ頚神経の障害を疑う。
下位の頸神経は腕以外に肩背部も支配しています。
※脳血管障害の場合、反射は亢進する(挙がり方が急)。
手掌オトガイ反射:手掌の母指球を鍵などで遠外方に向けてこする。同側のアゴの筋肉に収縮が起こる。
収縮が起こると陽性。だが、正常でも見られる事がある。前頭葉、錐体路の障害を指す。
(前頭葉、錐体路は中枢神経←運動を担当する場所)
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印象:西洋医学ー背筋の血行障害。
東洋医学ー経気阻滞、腎精不足
原因:腰の後湾の為、上半身に重心がかかる。姿勢不良、運動不足により血行障害を起こしたと考えられる。
治療方針
西洋医学ー背筋と頚神経周囲の血行改善。
東洋医学ー疏通経絡、補腎
鍼灸治療
~初日(1日目)~
針治療ー下位頚椎。肩、肩甲骨間部、腰部、足首。抜鍼後、吸玉。
施術前、施術後、ベッド上での動きもスムーズではない。
施術後、患者さん曰く、少し楽になった気がする。
~2回目(3日目)~
前回、施術後、痛みが少し楽になった。
異常な寒さを感じなくなったらしい。来院前まではサウナのような暑い暖房をつけていたのが、来院後、暖房をつけなくなったとの事。前回は杖をついて入室しされましたが、今回は玄関に杖を置いて入室。血圧を測ってみるとはっきりと拍動を感じました。針は怖いという事でお灸に変更。施術部位は同じ。灸の後、吸玉。
施術後、うつ伏せから腕立て伏せをする感じでスッと機敏に起き上がる。患者さん曰く、楽になった。帰りの歩幅が大きくなっていました。
~3回目(5日目)~
痛みが殆ど感じない。朝ぐっすり眠れるようになる。すくみ足、小刻み歩行の症状もまた良くなっていたので、手掌オトガイ反射をすると、反応が減弱していた。計6回の施術で終了。
意外な症例・・・
背中の起立筋(背筋の筋肉)の血行を良くしただけで、すくみ足、小刻み歩行という脳血管障害の症状まで改善。もちろん、起立筋を刺激した事によって脳(+脊髄)の血流は良くなった事は考えられるが、あまりにも回復が早すぎるし、効果も顕著だった。
通常、脳血管障害の鍼灸治療は醒脳開竅(せいのうかいきょう)法が使われます。また、脳血管障害は病歴が長いほど治療効果は低下すると言われています。境界は6ヶ月。(中には発症から6ヶ月以上経っても回復の早い人はいますが数回で良くなるのは珍しいです。)