鍼灸の刺激

人の身体は自分で治す自然治癒力や、身を守る免疫力が備わっています。傷害を受けるとそれらの機能が働きだし、身体に様々な反応を起こします。
鍼灸治療はこの反応を利用して、皮膚や筋肉に目には見えない微細な傷や小さなヤケドを作り、筋肉の血液循環を改善して肩こりや腰痛を改善したり、傷害を負った部位の修復を促進したりします。
また、人の身体には痛みを抑える仕組みがあり、痛いところを押さえたり擦ったりすると痛みが和らぐとか、気分が良くなることや楽しいことをしている間は痛みが気にならないといった経験をした記憶があるのではないでしょうか。
鍼灸の刺激も、痛みを抑えるこのような仕組みが働き、その結果として鎮痛効果を発揮します。
さらに、身体には皮膚や筋肉などに刺激が加えられると自律神経の活動が変化し、自律神経が支配する臓器・器官の働きが反射的に調節される仕組みも備わっています。


鍼や灸の刺激はその仕組みを利用して自律神経活動を変化させ、血管の調節をしたり臓器の働きを良くしたりします。その結果、血圧が調節されたり、ホルモンバランスが整えられたり、免疫系が活性化したりなど全身性の広範な効果が引き起こされます。
このことから、鍼灸治療を続けていると体調が良くなり、病気にもなりにくくなります。
私から一言

鍼は気持ちがいいと思わない患者さんもいますが、気持ちがいいとおっしゃる患者さんもいます。
マッサージと鍼灸の気持ちよさの違いを述べるときに『深部からほぐれる』『温泉に入ったあとみたい』という言葉をよく聞きます。また、気持ちがいいと感じていなかった患者さんも『今日はとても気持ちがよかった』という方もいらっしゃいます。
針は痛いという先入観を持たれやすい療法です。なので、余計にその想いが強い(緊張している)方は痛みを感じやすいようです。その他に筋肉が硬い場所に針を打つときも痛みを感じやすいです。
また、経験上、体の状態が悪いほど針が痛いと感じにくく、快方に向かうにつれ針が痛いと感じやすい傾向があります。なので、気持ちがいいと感じる人は比較的不健康である場合があります。
この不健康というのは加齢による疲れも入りますし、肉体的・精神的にストレスを抱えている場合も入ります。
最後に・・・もちろん技術が上手くなければ痛いと思います。

WHO(世界保険機構)による鍼灸治療適応の一部を紹介します
運動器系
関節炎、リウマチ、頸肩腕症候群、五十肩、腰痛、外傷の後遺症(骨折、打撲、むち打ち、捻挫)、各種スポーツ障害など
神経系
神経痛、神経麻痺、脳卒中後遺症、自律神経失調症、頭痛、めまい、不眠、神経症等
消化器系
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)、肝機能障害、胃十二指腸潰瘍、痔疾、口内炎等
呼吸系
気管支炎、喘息、風邪および予防等
循環器系
心臓神経症、動脈硬化症、高血圧低血圧症、動悸、息切れ等
内分泌代謝系
バセドウ病、糖尿病、痛風、脚気、貧血等
泌尿器系
腎炎、膀胱炎、尿道炎、性機能障害、尿閉、前立腺肥大等
婦人科疾患系
更年期障害、乳腺炎、白帯下、生理痛、月経不順、冷え症、のぼせ、つわり、不妊症等
耳鼻咽喉科系
耳鳴、難聴、メニエール氏病、鼻炎、蓄膿症、咽喉頭炎、扁桃炎、声枯れ等
眼科系
眼精疲労、仮性近視、結膜炎、疲れ目、かすみ目、ものもらい等
皮膚系
蕁麻疹、しもやけ、ヘルペス、おでき等
アレルギー系
気管支喘息、アレルギー鼻炎、眼炎等