51. 右股関節痛
主訴:右股関節が痛くて歩くのが辛い
現病歴:高血圧、高脂血症、肝嚢胞
既往歴:大腸がん
その他:夜間尿2回/1日、足の冷え
経過:
先天性股関節脱臼だったので、あぐらがかけない脚が組めないなどの制限はあったが、歩く上では痛みはなかった。ただ、疲れてくると股関節に疲れの影響は出てくる。
日常的に散歩をしていたが、3年ほど前のコロナが流行し始めた頃から歩かなくなり、その頃から股関節が硬いと感じ始めたら徐々に痛みに変わる。
1年半前から車の乗り降りも辛いので運転を止める。この頃から外出する気力がなくなっていった。
初回は右脚に全く体重がかけられない状態で歩いていました。
所見:
脚の腱反射で腰部神経の減弱が見られました。
股関節の可動は全くありません。
腰椎の並びがかなり歪んでいました。
施術方針:
腰椎と骨盤のバランスを良くする。
右股関節の動きを良くする。
左大腿部の緊張も強いので緊張をとる。
体質的に「腎」が弱いという判断をしたので補腎という施術もいれます。
舌の苔がかなり強く、大腸癌の既往もあることから、苔を解消する施術も取り入れました。
鍼灸治療:
初日の施術で右脚に体重がかけられるようになりました。施術を受けてから、立ち上がるときに左臀部上に痛みが出るのと右股関節から太ももに張り感があると言っていました。その代わり腰はかなり楽になる。
2回目来られた時も前回帰られた時と同じ状態でした。施術後は靴を履く時右股関節を曲げて履けなかったのができるようになっていました。左臀部と右股関節から太ももの感じは変化なし。
3回目も仰向けで膝を曲げて脚がお尻につけなかったのが、つけるようになりました。左臀部と右股関節から太ももの感じは変化なし。
患者さんから驚きの声として、施術を受けた日は夜中に行くトイレが一切なく熟睡できると喜んでいました。ただ残念ながら、2日目は通常通りということです。
ホームページのQ&Aにもあるように状態が重度の方は鍼灸治療効果が1日しかないということが書いてあります。この方は股関節の良い状態が数日持つので、泌尿器系の方(骨盤の状態)が重度だと予想できます。
結語:
施術後から左臀部の痛みと右股関節から太ももの張り感は、歩き方が変わったために起きた現象と思います。特に右股関節に体重をかけられるようになったので、右太ももには負担はかかるようになったとおもいます。また、徒手検査でも右股関節の可動が良くなったため、今までツッパリ感を感じていないところも感じるようになったのをみると動く範囲が広がったせいもあると思います。
この方は手術も勧められましたが、手術はしたくない、どうにかして歩けるようになりたいという思いで鍼灸治療を受けることになりました。
股関節の壊死や骨化がなければ、股関節の手術をする前に鍼灸治療を受けて欲しいと思います。
また、先天性だから良くならないと諦めている方も参考にしていただきたいです。この方も先天性脱臼で股関節を固定して過ごされた方で、あぐらや脚は組めないとおっしゃっていました。
人工置換術で痛みからすぐに解放されたいという気持ちもわかりますが、骨盤が原因で股関節痛を発症している方が多く見えます。そういう場合は手術後一見楽になりますが、常に骨盤関係の病気に悩まされる可能性があります。考えられる症状とは腰痛、泌尿器系の病気、婦人系の病気、消化器系の病気などです。
そして、その影響で腰より上にも影響が広がります。全身的には血圧や脂質、睡眠障害などもありますし、関節の素材によるアレルギーも出てきやすいと思います。
以下に置換手術によるデメリットも書いておきますので参考になさってください。
人工置換手術のデメリットは
・脱臼、感染症のリスク
・下肢に血栓ができる可能性がある
・神経障害、
・骨折
・人工関節の緩み、破損、摩耗
・金属アレルギー
・マイクロプラスチックの影響
・脱臼防止のための日常動作で注意が必要