11. うつ病 20代女性 研修時代の症例

研修時代の症例

 初めての来院のとき、お母さんと姉、兄の3人に付き添われてきました。一人で歩く事ができない様子でした。

 外見はひどく痩せて、皮膚もカサカサでボロボロしていました。本人は話す事ができないので、お母さんから事情を聞きました。

 食べる事、入浴する事などの日常的な活動ができないという事でした。先生が一通り診てから、はり灸治療に入りました。

 まず、鍼を打つときになると泣き始め、ぐずりました。先生はゆっくりと浅めに鍼を刺していきましたが、泣くのはなかなか止みませんでした。

 鍼灸治療後、患者さんは泣いてはいませんでしたが、相変わらず一人では歩けず家族に支えられ
表情もなく帰っていきました。

 こりゃダメかな?って思っていたら、2回目は一人で来院、それもちゃんとしゃべる事ができ、
具合がいいとの事。もちろん鍼灸治療中は泣いたりしていません。

 この出来事は本当にビックリしたました。正直、鍼で効くのかな~?って思っていたので。内科疾患はよく効くのは知っていましたが精神疾患も効くとは、この頃の私は知りませんでした。

しかし、臨床では精神疾患の他に神経内科の疾患にも鍼灸は良く効きます。

 この事については面白い説があります。それは発生学からの説です。

 人は受精卵から細胞分裂をして胚ができます。その胚はまた3つに分かれるのですが、その一つの区域から皮膚と神経系が分化していきます。

 この事から皮膚と神経系は深い関係があるから、皮膚を刺激する鍼は神経系にも影響を与えるという事になるみたいです。