53. 鵞足炎 40代女性

主訴:歩いく時に左膝に圧がかかると左膝が痛い


現病歴:鵞足炎、子宮腺筋症
既往歴:突発性難聴
その他:足のむくみ

経過
 1ヶ月前にマラソン大会で20kmを超えたところで左膝に違和感を感じた後、痛みに変わる。
 翌日整形外科を受診し鵞足炎と診断される。
 ロキソニンの服用と湿布で二週間ほどで痛みは和らぐ。その後、漢方ツムラ89「打撲一方」に変える。

 同時進行で整形外科マッサージとでリハビリ治療を週に1回の間隔で受ける。歩行時の痛みはあまり改善が見られない。

 痛みは引っ張られるような痛み。動き始めは痛むが動いていると楽になる。
 鵞足炎診断一週間後左脛上部に静脈瘤ができてからずっと消えない。
 
 ※この方は52.左肩の痛みの方です。4ヶ月前に転倒で左手をついて肩を痛めています。

所見
 西洋医学的所見:
 ・腱反射は全て反応なし。
 ・四の字で太腿部分に痛みあり。特に左は股関節も痛みが出る。
 ・Kボンネット検査でも股関節周囲に痛みあり。
 ・鵞足部と関連の筋肉に圧痛。
 ・立った時の右足指が開いて立つ。マラソン用の靴は0.5センチ大きいものを使うようです。

 東洋医学的所見:
 ・冷えと弱っている(疲れている)脈でした。舌の状態は苔が強く出ていました。
 このことから、気の巡りが悪いため、水の流れが悪くなり滞りが起きて、重だるい状態を指しています。

施術方針
 腰の神経に問題があり、膝を動かす筋肉に関係することから腰回りの血行改善と徒手検査で股関節に痛みがあることから骨盤の改善をする。
 鵞足に関係のある筋肉の緊張を緩和。
 炎症を抑えるためにテーピング。

 東洋医学的所見からは「脾」という臓器が弱っているのがありましたので、そこを補うのと気の巡りをよくして水の滞りをとる施術をします。

鍼灸治療
 数回ほどの施術で鵞足部の圧痛は無くなりました。ただ歩く時に圧がかかる時の痛みは、施術後はかなり楽ということですが日にちが経つと痛みは半減と程度の痛みに戻るということです。
 ゴールデンウィークに入ったのをキッカケに施術は中止になります。

結語
 腰が悪いため膝を使う筋肉がうまく使えず、脚の内側へ力が入りやすい状況でマラソンのような長距離を走ると自ずと鵞足炎は起こしやすいです。また、骨盤の状態も良くないので股関節にも負担がかかり、その影響で膝にもかかるというのがあります。ただし、骨盤が悪いと腰にも影響します。

対策は
 1. 腰・骨盤の状態を改善する。
 2. インソールを履き、テーピングをする。
 3. マラソンの後、アイシングをする。

この対策をしながら、腰・骨盤の状態が良くなり脚に力が入りやすくなり、鵞足に負担がかからなくなったら、2のインソール、テーピングはしなくても大丈夫です。

余談
 私は4ヶ月前に足を引っ掛けて手をついて左肩を痛めたことも鵞足炎に影響を与えていると思います。根拠として、人は歩く時に両腕も振り子のように振って歩きやすくしていますし、腕でバランスもとっています。
 そのバランスが崩れたときの負担が今まで気づかない程度に悪くなっていた左脚にかかったため、鵞足炎が発症したのではないかと思います。

 私はバランスは知らないところで無意識にとっていると考えているので、何か気にもとめないようなことでバランスが崩れたために不調は起きると思っています。ただし、その素地として筋肉が弱い、柔軟性がないなどの条件がある場合です。筋肉が発達して鍛えている方は、バランスが崩れてもそれほど影響がないように思われます。

 なので、痛めてしまった場合や不調な場合はまず鍼灸治療などで施術をしてもらい改善してから、筋肉を鍛えたり、柔軟性を持たせるストレッチを取り入れることをお勧めします。
そうすることで、バランスが崩れにくくなりますし、少々バランスが崩れても全く影響がなくなります。

 また、子宮線筋症を患っているのも、骨盤が原因ではないかと思います。通常、泌尿器系、生殖系、消化器系は骨盤が原因のことが多いからです。
 骨盤が原因の場合、骨盤の応対が良くなると改善することも多いです。

心当たりのある方は、一度、鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか。